労務リスク対応

カスハラ対策を就業規則に入れる義務はあるか?企業が今すぐ規程整備すべき実務的な理由

顧客から過度な要求や暴言を受けた社員が「会社に助けてもらえなかった」と感じたとき、最初に会社が問われるのは就業規則に何が書いてあったかです。カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客・取引先などが立場を利用して行う、社会通念上不相当な要求や言動を指します。現時点では就業規則へのカスハラ対策記載を直接義務付ける規定は存在しませんが、労働契約法に基づく安全配慮義務と2022年改正の労働施策総合推進法の趣旨から、対応方針を規程化しておかない企業は訴訟・離職・レピュテーション毀損の三重リスクにさらされます。

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カスハラ対策の就業規則記載が「義務ではないのに急がれる」理由

2023年に東京都が全国初のカスタマーハラスメント防止条例を施行し、2025年には改正労働施策総合推進法でカスハラ対策の措置義務が事業者に課される方向で審議が進んでいます。現時点で就業規則への明記を直接命じる法律はありませんが、裁判所は「合理的な対応マニュアルを備えていたか」「相談窓口が機能していたか」を安全配慮義務の履行有無の証拠として確認します。規程がなければ『会社は対策を取っていなかった』と判断されやすく、損害賠償請求で不利な立場になります。

法的義務かどうかという問いだけに答えると、現段階では『直接義務ではない』になります。しかし義務化の流れが確実に進んでいるため、先行して整備しておくことは経営リスクの低減と採用力の維持につながります。特に飲食・小売・介護・コールセンターなど顧客接点が多い業種では、カスハラによるメンタル不調や離職が既に実被害として発生しており、規程の有無が求職者の選択基準にもなりつつあります。

就業規則に盛り込む4つの要素と記載の考え方

カスハラ対策規程に最低限入れておきたい要素は次の4点です。①カスハラの定義(何が該当するかを言葉で確定する)、②従業員の報告義務と会社の対応義務(報告を受けたら会社が動く、という約束を明文化する)、③相談窓口の設置と守秘義務(誰に報告するか・秘密が守られるかを明示する)、④悪質な顧客への対応方針(取引停止・警察通報を含む会社としての行動指針)。これらが規程にあると、現場の従業員は顧客に対して『当社の規程に従い対応させていただきます』と会社を後ろ盾にした説明ができるようになります。

懲戒規定との関係では、カスハラ対策はハラスメント防止規程(パワハラ・セクハラ)と同じ章に並べるのが一般的です。従業員が顧客からのハラスメントを隠蔽・放置した場合や、逆に従業員側が顧客に不当な対応をした場合も懲戒事由として整理しておくと、社内外双方向のトラブルに対応できます。記載例としては『会社は、顧客等から従業員に対する著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)を防止するため、必要な措置を講じる』といった文言から始め、具体的な該当行為(長時間の拘束・脅迫的言動・SNSでの誹謗中傷など)を例示列挙する形が実務では読まれやすく機能します。

相談窓口と対応フロー:規程と実態を一致させる

規程に相談窓口を設けても、実態として機能していなければ安全配慮義務の観点からは「あっても使えない状態」と評価されます。窓口の設置とあわせて、①報告受付→②事実確認→③会社対応(顧客への連絡・警告・取引停止)→④本人フォロー(休養・カウンセリング案内)という対応フローを規程または付属のガイドラインとして文書化してください。フローが文書化されていると、担当者が変わっても対応が属人化せず、事後に『どの段階で何をしたか』の記録が残ります。

特に重要なのが事案記録の保存です。日時・顧客の言動・従業員の状況・会社の対応を時系列で記録しておくと、後に顧客から逆クレーム・訴訟を起こされた際の防衛証拠になります。記録の様式は統一しておくと、複数案件が重なったときに傾向分析(同一顧客の繰り返し行為、特定の時間帯・チャネルへの集中)も可能になります。

番頭を使ったカスハラ対応履歴の整理と企業防衛

番頭は、会社の就業規則・組織構造・従業員情報をあらかじめ登録した状態で労務の整理を補助する労務AIです。カスハラ対応においては、対応履歴や相談記録を番頭に蓄積しておくことで、『この顧客へは過去に何度・どのような対応をしたか』を時系列で引き出す整理ができます。管理職が変わるタイミングや繁忙期に引き継ぎが不十分になりがちな事案記録を、番頭が会社の文脈を保持したまま整理するため、対応の抜け落ちを減らせます。

また、複数の従業員から類似のカスハラ報告が集まっている場合、番頭を通じて案件のパターンを整理することで、特定の顧客・チャネル・商品カテゴリにリスクが集中していることが把握しやすくなります。就業規則の改訂タイミング(毎年の労使協議の前など)に、番頭に蓄積した対応記録をもとに『今の規程で対応できていない事案の傾向』を確認し、規程の修正に反映させるという活用が実務上の使い方として機能します。なお、番頭は情報の整理と補助を行うものであり、法的判断や書類作成の代行は行いません。規程改訂の最終確認や個別事案の法的評価は専門家にご相談ください。

整備の優先順位と進め方:何から手をつけるか

就業規則を初めて整備する場合も、既存規程に追記する場合も、最初に確認すべきは現在の規程にハラスメント防止の条項が存在するかどうかです。パワハラ防止規程がすでにある会社は、その章にカスハラの定義と対応義務を追記する形が最もスムーズです。ゼロから作る場合は、厚生労働省が公表しているカスタマーハラスメント対策企業マニュアル(2022年版)の定義・行為類型を参考に、自社の業種・顧客接点の種類に合わせて具体例を調整してください。

優先度が高い会社の特徴は次の3点です。①顧客対応が電話・対面・SNSなど複数チャネルにわたる、②パート・アルバイト・派遣社員が顧客の最前線に立つ、③過去1年間に従業員から顧客対応に関する不満・体調不良の申告があった。これらに一つでも該当する場合、今期中の規程整備を検討してください。整備後は従業員への周知(朝礼・社内掲示・研修)と、相談窓口の連絡先の明示が義務の範囲として求められます。

番頭はこう答えます

サンプルの会社情報を覚えた状態での、回答のイメージです。数値や規程の内容は説明用の例です。 番頭の答えは一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。

よくある質問

カスハラ対策を就業規則に書くことは、現時点で法律上の義務ですか?

2025年時点では、就業規則へのカスハラ対策明記を直接命じる法律はありません。ただし、使用者は労働者の安全に配慮する義務(労働契約法第5条)を負っており、カスハラに対して合理的な措置を取っていなかった場合に安全配慮義務違反として責任を問われる可能性があります。加えて、改正労働施策総合推進法の審議状況を踏まえると、近い将来に措置義務が明文化される見通しです。『義務ではないからまだよい』ではなく、先行整備がリスク低減につながります。

就業規則のカスハラ条項を作れば、それだけで従業員を守れますか?

規程は従業員を守るための基盤ですが、それだけで十分ではありません。規程の内容を従業員に周知すること、相談窓口が実際に機能していること、報告を受けた後に会社が具体的に動く体制があること、この3点が揃って初めて規程が機能します。また、実際にカスハラが発生した場合の対応判断や、顧客との交渉・法的措置については、状況に応じて専門家に相談することをおすすめします。本ページは一般的な情報提供であり、個別事案への法的判断や書類作成の代行を行うものではありません。

番頭でカスハラ対応の就業規則条文を自動生成してもらえますか?

番頭は、会社の既存の就業規則や組織情報を踏まえて、どの章に何を追記するかの整理や、記載項目の確認を補助することができます。ただし、完成した条文を法的に保証する機能は持ちません。番頭を使って追記案の方向性を整理した後、最終的な条文内容は専門家に確認していただくことで、実務上の精度が高まります。

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