就業規則・ハラスメント対策

カスハラ就業規則の記載例と押さえるべき4つの構成要素

カスタマーハラスメント(カスハラ)を就業規則に明記する際は、「定義」「従業員への対応指針」「会社の支援体制」「懲戒との関係」という4つの構成要素を順に整えることが、実効性あるルールづくりの出発点になります。

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なぜ今、カスハラを就業規則に明記するのか

顧客や取引先からの暴言・長時間拘束・過度なクレームを「お客様の声」として受け続けてきた職場では、担当者が消耗し、離職につながるケースが後を絶ちません。2025年には改正労働施策総合推進法によりカスハラ対策の措置義務化が議論される段階に入り、企業側に「放置しない姿勢」を明示する必要性が高まっています。

就業規則にカスハラの条項を設けることで得られる効果は2点あります。1点目は従業員への安心感です。「会社は守ってくれる」という明文の根拠があるだけで、現場が毅然とした対応をとりやすくなります。2点目は会社の義務履行の記録です。労務トラブルや訴訟の場面で、ルールが事前に定められていたかどうかは会社の対応姿勢の証拠になります。

記載例を作る前に確認したい「定義」の書き方

カスハラの定義をあいまいにしたまま条項を設けても、現場では「どこまでが対応義務でどこからが拒否できるか」の判断がつきません。厚生労働省が2022年に公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラを『顧客等からのクレーム・言動のうち、要求の内容が正当でないもの、または要求の手段・態様が社会通念上相当でないもの』と定義しています。この枠組みを引用しつつ、自社の業種に合わせた例示を加えると実用的です。

【記載例・定義条項(参考)】本規則においてカスタマーハラスメントとは、顧客、利用者または取引先等(以下「顧客等」という)からの要求または言動であって、その要求の内容が正当性を欠くもの、または要求の手段もしくは態様が社会通念上相当と認められる範囲を超えるものをいいます。具体例として、長時間にわたる電話・来店での拘束、人格を否定する発言、SNSや口コミでの誹謗中傷の示唆などが含まれます。 例示を入れる際は「含まれるがこれに限らない」と付け加えると、列挙に漏れた事例も対象にできます。

従業員への対応指針と会社の支援体制の記載例

定義の次に必要なのは「従業員はどう動けばよいか」と「会社は何をするか」の2軸です。現場の担当者が単独で抱え込まず、上長や会社組織に引き継げるフローを就業規則の文言に落とし込みます。

【記載例・対応指針と支援体制(参考)】会社は、カスタマーハラスメントに該当すると判断した場合、従業員が単独で対応し続けることを強いません。従業員は、カスハラに該当すると判断した顧客等への対応を上長または担当部門に引き継ぐことができます。会社は、①相談窓口の設置、②必要に応じた複数名対応・録音など証拠保全の指示、③法的対応を含む外部専門家との連携を行います。また、カスハラを受けた従業員に対して、相談対応の記録を保持し、不利益な取り扱いをしません。 「不利益な取り扱いをしない」の明記は、従業員が相談をためらわないための重要な一文です。

支援体制の条項と合わせて、相談記録・対応履歴の管理方法を社内で決めておく必要があります。誰が・いつ・どのような相談を受け・どう対応したかを記録し、一定期間保存することで、繰り返し被害を受けた場合の証拠にもなります。紙台帳でも運用できますが、件数が増えると管理が難しくなるため、記録を集約できるツールを活用する会社が増えています。

懲戒規定・取引拒絶との関係をどう書くか

カスハラ対策の条項で見落とされがちなのが、「従業員がカスハラ行為に関与した場合」の懲戒と、「会社が顧客等との取引を打ち切れる根拠」の2つです。

従業員が顧客に対してカスハラを誘発するような不適切な言動をした場合は、既存の服務規律・懲戒規定の対象になります。就業規則に「顧客への誠実な対応義務」が定められていれば、別途カスハラ加害の懲戒条項を設けなくても運用できることが多いですが、会社の業種や過去のトラブル状況に応じて追記を検討します。

【記載例・取引拒絶の根拠(参考)】会社は、顧客等の言動がカスタマーハラスメントに該当すると判断した場合、当該顧客等との取引または契約の継続を停止できるものとします。この場合、会社は従業員の安全確保を最優先事項として判断を行います。 この条項は「会社として断れる」という根拠を社内外に示す役割を持ちます。取引停止の判断基準をある程度具体化しておくと、現場での迷いが減ります。

業種・規模別に文言を調整するポイント

小売・飲食・医療・公共サービスなど、顧客接点の多い業種ほどカスハラリスクは高くなります。一方で、BtoB中心の会社では「顧客等」に取引先の担当者も含まれることを明記する必要があります。

従業員数や体制の規模によって、相談窓口の担い手が異なります。大企業では人事部門・コンプライアンス部門が窓口を担いますが、中小企業では総務や経営者が窓口になることも多く、その場合は「外部の相談機関(都道府県労働局、弁護士など)を活用する」旨を文言に加えると実態に合います。

既存の服務規律やハラスメント防止規定がある場合は、カスハラ条項をどこに位置づけるかも確認が必要です。独立した章を設ける会社もあれば、ハラスメント防止規定の中にカスハラの定義を追加する会社もあります。どちらでも実務上の問題はありませんが、条文の参照関係を整理しておくと後の改定がしやすくなります。就業規則の変更は労働者代表への意見聴取と労働基準監督署への届出が必要ですので、文言確定後の手続きも忘れずに確認してください。

番頭でカスハラ対応記録を一元管理する

就業規則にカスハラ対策を明記しても、相談記録や対応履歴の管理が属人化していると、制度の実効性が下がります。同じ顧客から繰り返し被害を受けているのに記録がバラバラで、対応方針の引き継ぎができない、というケースは珍しくありません。

番頭は、自社の就業規則や社内ルールを登録しておくことで、相談対応の整理や記録の構造化をサポートします。たとえば「この顧客への対応をどう記録すればよいか」「今回の案件は就業規則の定義に該当するか整理したい」といった相談に対して、登録済みの自社ルールを前提に確認のポイントを整理するところから手伝います。最終的な判断や法的な評価は社労士・弁護士などの専門家に委ねることを前提としつつ、日常の記録管理と担当者間の情報共有の手間を減らすことが番頭の役割です。

番頭はこう答えます

サンプルの会社情報を覚えた状態での、回答のイメージです。数値や規程の内容は説明用の例です。 番頭の答えは一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。

よくある質問

カスハラ対策を就業規則に入れるのは法律上の義務ですか?

2025年時点で、カスハラ対策の就業規則明記は法律上の義務として確定しているわけではありません。ただし、使用者には労働契約法上の安全配慮義務があり、カスハラによる精神的健康被害を放置すると義務違反と評価されるリスクがあります。東京都のカスハラ防止条例(2024年施行)のように自治体レベルでの規制も広がっており、先行して整備する企業が増えています。本ページの記載は一般的な情報提供であり、個別の法的助言や書類作成代行ではありません。自社の就業規則への反映にあたっては、社会保険労務士や弁護士にご確認ください。

パートやアルバイトにもカスハラ規定は適用されますか?

就業規則の適用範囲として正社員のみを対象にしている会社では、パート・アルバイト向けの別規則(パート就業規則など)にも同様の条項を設ける必要があります。顧客接点が多い業種ではパートスタッフがカスハラの被害を受けるケースも多く、適用範囲の整合を確認することが重要です。

就業規則を変更するとき、従業員への周知はどうすればよいですか?

就業規則の変更には、①過半数労働組合または労働者の過半数代表者への意見聴取、②所轄の労働基準監督署への届出、③全従業員への周知(掲示・配布・イントラネット掲載など)の3ステップが必要です。周知が不十分な場合、条項の効力が認められないリスクがありますので、変更後は周知の記録も残しておくことをお勧めします。

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