カスハラとは、顧客・取引先・第三者が従業員に対して行う、業務の適正な範囲を超えた著しい言動や要求のことです。2024年の迷惑行為対策法改正(労働施策総合推進法の指針改定を含む一連の制度整備)を受けて、企業には就業規則にカスハラへの対応方針を明記し、従業員を守る体制を整える義務が求められるようになっています。本記事では改正の要点を整理したうえで、就業規則の修正箇所・記載例・運用上の注意点を実務的に解説します。
2024年以降の制度整備において、カスハラへの対応は「努力義務」の段階から、経営者・人事担当者が具体的な防止措置を講じることが強く求められる方向へ移行しています。厚生労働省が示した指針では、企業が就業規則や基本方針にカスハラへの対応を明文化すること、相談窓口を設けること、従業員への周知を行うことが実務上の対応として挙げられています。
特に重要なのは「会社として顧客からの著しい迷惑行為を容認しない」という姿勢を、内部規程で明示することです。これが就業規則に記載されていない場合、従業員が被害を申告しても会社が組織的に対応しにくくなり、労務トラブルに発展するリスクが高まります。パワハラやセクハラと同様に、就業規則の服務規律・ハラスメント防止条項の中にカスハラを明示することが、まず必要な第一歩です。
なお、本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的判断や規程の作成代行ではありません。自社の状況への当てはめや書類の整備については、専門家への確認をあわせてご検討ください。
まず「定義条項」の追加です。就業規則または別規程(ハラスメント防止規程など)に、カスハラの定義を明記します。一般的な定義例は「顧客・取引先・第三者が、労働者に対して行う、社会通念上相当な範囲を超えた言動であって、就業環境を著しく害するもの」という形です。言葉の定義が規程にないと、現場の上司や担当者が「これはカスハラにあたるのか」と判断できず、対応が個人任せになってしまいます。
次に「報告体制・会社の対応フロー」の記載です。被害を受けた従業員が誰に・どのように報告するか、会社はどんな手順で対応するかを条文に盛り込みます。例えば「被害を受けた従業員は所属長または人事担当者に速やかに報告し、会社は報告を受けた日から〇営業日以内に事実確認を開始する」といった形です。対応フローが就業規則に書かれていることで、現場がためらわず報告でき、会社も一貫した対応が取りやすくなります。
3点目は「懲戒規定への明示」です。カスハラを行った社内従業員(二次加害・握りつぶし・放置を含む)に対して懲戒処分の対象になりうることを規定に加えます。また、顧客への対応では直接懲戒をかけるわけにはいきませんが、会社として取引を拒絶できる旨や、警察・弁護士への相談を行う旨を社内規程に明示しておくと、現場の初動判断の拠り所になります。
従業員30名未満の小規模企業では、独立したカスハラ防止規程を整備するより、既存の就業規則(特に「服務規律」「ハラスメントの禁止」条項)に数条を追記する方が現実的です。記載例のイメージとしては、以下のような形が考えられます。(あくまで記載の参考例です。自社の就業規則の体裁・既存条項との整合は専門家と確認してください。) 【記載例・小規模版】 第〇条(カスタマーハラスメントの禁止) 会社は、顧客等から従業員に対する著しい迷惑行為(以下「カスタマーハラスメント」という)を防止するため、必要な体制を整備するものとする。 2 従業員は、カスタマーハラスメントを受けた場合、所属長または人事担当者に報告しなければならない。 3 会社は、報告を受けた場合、事実確認を行い、必要に応じて顧客等との取引の中断を含む適切な措置を講じるものとする。
従業員100名前後の中規模企業では、ハラスメント防止規程をカスハラも含む形で改訂し、相談窓口の設置・外部窓口(顧問の専門家など)の活用・記録保管のフローを加えることが望ましい形です。規程に加えて、「顧客対応マニュアル」や「被害報告書の書式」を整備しておくと、就業規則と現場運用が連動しやすくなります。
どの企業規模でも共通する注意点は、就業規則の変更手続きを正しく踏むことです。就業規則の変更は、労働者代表(または労働組合)への意見聴取と、労働基準監督署への届出が必要です。変更内容を従業員に周知するタイミングも含め、手続きの抜け漏れがないか確認する必要があります。
まず確認する場所は、就業規則の「目次・章立て」です。ハラスメント禁止条項(セクハラ・パワハラ)がどの条文に置かれているかを特定し、そこにカスハラの定義と対応フローを追記する形が最も整合しやすい構成です。「第〇章 服務規律」または「第〇条 各種ハラスメントの禁止」の付近が多いはずです。
次に確認するのは「懲戒規定」の条文です。現在の懲戒事由の列挙に「ハラスメント行為を行い、または隠蔽した場合」という記載があれば、そこにカスハラへの不対応・隠蔽も含まれるよう文言を拡張できるか検討します。既存の列挙が網羅的でない場合は、カスハラ関連の不対応を明示的に追加することが安全です。
最後に「相談窓口・報告ルート」の有無を確認します。セクハラ・パワハラの相談窓口が既にある場合は、そこにカスハラも含まれることを明示するだけで足ります。窓口が未整備の場合は、担当者名・連絡先・秘密保持の方針をセットで規程に盛り込みます。この3点(ハラスメント条項・懲戒条項・相談窓口)を順に確認することで、就業規則のどこを・どのように修正すればよいかの見取り図が見えてきます。
Kabauは、あなたの会社の就業規則・服務規程・雇用契約書をあらかじめ登録しておくことで、「今の規程にカスハラの定義が入っているか」「懲戒条項のどこを確認すべきか」といった問いに、自社の書類を前提として答えるAIアシスタントです。法改正への対応を検討するとき、「まず自社の現状がどうなっているか」を把握する作業が一番手間のかかる部分ですが、Kabauは登録済みの規程を参照して、確認すべき条文の場所や追記の方向性を整理するサポートができます。
具体的には、就業規則のPDFやテキストを登録しておくと、「カスハラに関する条文は何条あるか」「ハラスメント禁止の条項はどこか」といった問いに自社の書類ベースで応答します。また、改正対応で必要な追記イメージ(記載例の叩き台)を出力し、実際に規程を整備するときの作業量を減らすサポートをします。最終的な規程の確定・届出・法的な適正性の判断は専門家に委ねることが前提ですが、「何から手をつければよいか」の整理段階をKabauが担うことで、担当者の負担を大きく下げることができます。
サンプルの会社情報を覚えた状態での、回答のイメージです。数値や規程の内容は説明用の例です。 就業規則AIの答えは一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。
うちの就業規則にカスハラの定義条項が入っているか確認したい。登録している就業規則のどの条文を見ればいい?
登録いただいている御社の就業規則を確認したところ、第12条「服務規律」と第18条「ハラスメントの禁止」に関連する記載があります。第18条はセクシャルハラスメントとパワーハラスメントを列挙していますが、カスタマーハラスメントの定義と報告フローは現時点では含まれていない形です。追記が必要な箇所は第18条への定義文の追加と、第25条「懲戒事由」への不対応時の文言拡張が考えられます。具体的な文言の整合は専門家と確認のうえ進めていただくことをお勧めします。
カスハラの相談窓口を設置したいが、規程にどう書けばいいか叩き台を出してほしい。会社は従業員50名で、外部顧問はいない。
御社の規模(50名・外部顧問なし)を前提にすると、社内担当者を窓口として設置する形が現実的です。規程への記載例の叩き台として、「第〇条(相談窓口)会社は、カスタマーハラスメントに関する相談窓口を設置し、担当者(人事担当〇〇)が対応する。相談者の秘密は厳守し、相談を理由とした不利益取扱いは行わない。」という形が考えられます。これはあくまで叩き台であり、既存の条文体裁や他条との整合は実際の規程をもとに専門家と確認してください。
現時点で就業規則へのカスハラ記載がないこと自体に、即座に罰則が科されるわけではありません。ただし、従業員がカスハラ被害を申告した際に会社が組織的な対応を取れず、結果として従業員が精神的な不調をきたした場合、安全配慮義務違反として会社の責任を問われるリスクが高まります。また、就業規則にカスハラへの対応方針が明示されていないと、現場の上司が個人判断で対応するしかなく、対応の遅延・不均一が起きやすくなります。早期に定義と報告フローだけでも明記しておくことが、リスク管理として有効です。
従業員数が少ない段階では、既存の就業規則(服務規律・ハラスメント禁止条項)に数条を追記する形で対応するケースが多く、独立した別規程を整備しなければならないわけではありません。大切なのは「会社としてカスハラを容認しない」「報告があれば会社が対応する」という方針と手順が、従業員が参照できる形で書かれていることです。規模が大きくなるにつれて独立規程を整備する企業が増えますが、どちらの形が自社に適切かは、現在の就業規則の構成や労働者数を踏まえて専門家と検討することをお勧めします。本記事の内容は一般的な情報提供であり、個別の規程作成代行や法的判断ではありません。
就業規則を変更する際は、労働基準法の定めにより、労働者の過半数を代表する者(労働組合がある場合は労働組合)の意見を聴取し、その意見書を添付したうえで労働基準監督署へ届出を行う必要があります。また、変更後の就業規則は従業員が容易に見られる形で周知することが義務付けられています(常時掲示・備え付け・電子データ閲覧など)。手続きを省略して変更した場合、変更の効力が生じないリスクもあるため、スケジュールに余裕をもって進めることが大切です。
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