労務管理・就業規則

カスハラ 就業規則 例|就業規則への文言の落とし込み方と運用ポイント

「クレーム対応のマニュアルはある。でも、就業規則のどこにも『カスハラ』という言葉が出てこない」。そのような状態のまま現場の担当者が理不尽な要求を受け続けているケースは、中小企業でも珍しくありません。カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客・取引先等が、商品・サービスに関する苦情の範囲を超えて、従業員に対して著しく不当な言動・要求をおこなう行為を指します。就業規則にカスハラの定義と対応手順を明記することで、従業員は「会社が守ってくれる」と実感でき、組織としての対応の統一性も生まれます。

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なぜ今、就業規則へのカスハラ規定の明記が求められているか

2024年4月施行の改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法の体制整備義務)は、職場内のハラスメントを対象の中心に置いていますが、厚生労働省が同時期に公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」は、顧客から従業員へのハラスメントについても会社側が方針を明確化し、体制を整えることを強く推奨しています。義務か努力義務かという線引きよりも、「現場の従業員を守る仕組みが就業規則に書かれているか」という視点が、採用・定着・離職防止の面でも問われるようになっています。

実際に問題が起きたとき、就業規則に何も書かれていなければ、現場の担当者が自己判断で対応せざるを得ず、二次被害(精神的ダメージの蓄積・離職)につながりやすくなります。規定を置くことで、会社として対応の打ち切り判断ができる根拠が生まれ、担当者が「規程上の限度を超えた要求には応じられません」と毅然と伝えることができます。

就業規則に盛り込む『カスハラ禁止規定』の文言例

以下は一般的な記載例です。自社の業種・規模・リスク感に合わせて加筆・修正して使用してください。なお、この文言例は一般的な情報提供であり、個別の規程内容の適否判断は専門家にご確認ください。 【第○条(カスタマーハラスメントへの対応)】 1. 会社は、顧客・取引先その他の外部の者から、従業員に対して以下の行為があった場合をカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」という)として認定し、組織的に対応します。 (1)正当な理由のない商品・サービスの無償交換・返金・損害賠償の要求 (2)社会通念上許容される範囲を超えた謝罪・土下座の強要 (3)長時間にわたる電話・来店・メール等による拘束 (4)SNS・口コミサイトへの根拠のない誹謗中傷の投稿または投稿の脅迫 (5)従業員の個人情報(氏名・住所・SNSアカウント等)を探索・公開する行為 (6)その他、従業員の就業環境を著しく害する言動 2. 会社は、カスハラと認定した案件について、顧客・取引先との対応を打ち切り、または法的措置を含む適切な対処をおこなうことができます。 3. 従業員がカスハラを受けた場合は、所定の報告ルートで速やかに申告し、担当者が単独で抱え込まないよう努めます。

禁止行為の定義はできるだけ「行為の様態」で書くのがポイントです。「著しく不当な言動」だけでは解釈の幅が広く、現場判断に負荷がかかります。上記の(1)〜(6)のように類型別に列挙することで、「この要求はカスハラ認定の対象か」という現場の判断コストが下がります。SNSや口コミへの言及を明示的に入れているのは、近年この類型が増えているためです。

禁止行為の定義で迷いやすい3つのポイント

第一のポイントは「正当なクレームとの線引き」です。商品の欠陥による返品要求や、契約上認められた損害賠償請求は正当な権利行使であり、カスハラではありません。「正当な理由のない」という限定語を定義に入れることで、この線引きを明確にできます。

第二のポイントは「回数・時間の目安」です。「長時間の拘束」という表現は曖昧なため、社内運用ルール(例:1件の電話対応を30分超・同一日に3回以上の繰り返し連絡は上長へ引き継ぐ)と組み合わせて機能させます。就業規則本文に細かい数字を入れると改訂コストが上がるため、別途「カスハラ対応ガイドライン」として整備し、就業規則では「会社が定めるガイドラインに従う」と参照する形にするとメンテナンスが楽になります。

第三のポイントは「SNS・口コミへの対応手順」を先に決めておくことです。規定に明記しても、発生したときの初動手順(証拠保全・投稿削除申請・法的対応の可否判断)が社内で共有されていなければ規定が絵に描いた餅になります。規定整備と並行して「誰が・何日以内に・どこへ報告するか」というフローを決めておくことが実務上重要です。

従業員への周知と研修の進め方

就業規則を改訂しても、従業員が内容を知らなければ実際の場面で機能しません。周知の方法として一般的なのは、①全従業員への書面または電子交付(改訂箇所を抜粋したサマリーを添付する)、②朝礼・部門会議でのポイント説明、③ロールプレイング形式の研修(実際の場面を想定した受け答えの練習)の3段階です。

特に接客・コールセンター・サービス業では、「どんな言動がカスハラに当たるか」を具体的な場面で理解してもらうことが研修の核になります。文言例を読み上げるだけでなく、「この電話対応のケースはどの類型に当たるか」という演習形式にすると理解が深まります。研修の実施記録(日時・参加者・内容の概要)は、後日問題が生じたときの会社の対応証拠になるため、保管しておくことをお勧めします。

周知・研修の頻度は、年1回の定期実施を基本としつつ、法改正や重大案件の発生時に都度おこなう体制を整えておくと安心です。番頭では、自社のカスハラ対応規程の改訂時期や研修履歴を登録しておくと、「次の確認タイミングがいつか」を尋ねたときにすぐ整理できます。

番頭でカスハラ対応の相談・事例管理・改訂判断を効率化する

番頭は、会社の就業規則・ガイドライン・過去の対応事例を登録しておくことで、「この要求はカスハラ認定の対象に入るか」「対応打ち切りの判断基準として社内ではどう定めているか」を日々の相談に即座に整理できる労務AIです。担当者が個別のケースを持ち込んだとき、登録済みの規程と照らし合わせた初期整理を補助します。

また、自社のカスハラ対応実績(案件の類型・対応結果・かかった工数など)を蓄積していくと、「就業規則のどの類型が現場でよく使われているか」「定義が曖昧で判断に困った事例はどれか」が見えてきます。その情報をもとに、規程の改訂が必要かどうかを検討するタイミングの判断材料にもなります。

規程の文言を変えるかどうかの最終判断は専門家に確認することをお勧めしますが、「改訂の要否を検討すべき状況かどうか」の事前整理は番頭でおこなうことができます。就業規則を整備した後も、現場の対応状況を記録として残していくことで、規程が実態に合っているかを継続的に確認できる体制が生まれます。

番頭はこう答えます

サンプルの会社情報を覚えた状態での、回答のイメージです。数値や規程の内容は説明用の例です。 番頭の答えは一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。

よくある質問

カスハラの規定は就業規則の本則に入れるべきですか、それとも別規程でよいですか?

どちらの方法にも実績があります。就業規則の本則(職場環境・ハラスメント禁止に関する章)に1条追加する形は、会社としての方針を明文化する観点で明確です。一方、対応フロー・判断基準・事例の類型など運用上の細則は、改訂頻度が高くなりやすいため、「カスハラ対応ガイドライン」として別文書に切り出し、就業規則では「会社が定めるガイドラインに従う」と参照する形にすると、本則の改訂手続き(労働基準監督署への届出・意見書の取得)を都度おこなわずに済みます。どちらが自社に適しているかは、業種・更新頻度・規模感によって異なりますので、就業規則の改訂を検討する際は専門家にもご確認ください。

カスハラの規定を就業規則に入れると、顧客対応が委縮しないか心配です。

規定の趣旨を周知する際に、「正当なクレームへの誠実な対応は会社として引き続き重視する」という点をあわせて伝えることが重要です。カスハラ規定は、理不尽な要求から従業員を守るためのものであり、正当なご意見やご要望を遮断するものではありません。研修で具体的な場面を用いて「このケースはカスハラに当たるか・当たらないか」を演習すると、現場の判断基準が整理され、委縮よりも「対応の根拠が明確になった」という感想が多く聞かれます。

番頭はカスハラの規程作成を代行してくれますか?

番頭は、会社の前提情報・既存の規程・過去の対応事例を登録したうえで、文言の整理や比較・改訂タイミングの検討を補助する労務AIです。規程の起案や法的な適否の判断を代行するものではなく、一般的な情報提供と社内情報の整理が役割の範囲です。就業規則の新設・改訂については、最終的な内容の確認・届出手続きは専門家とともにおこなうことをお勧めします。

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