就業規則・労務規定

カスハラ就業規則の規定例:対策に欠かせない5つの条項と整備の手順

「カスハラへの対応を就業規則に明記したいが、どのように規定すればよいかわからない」というご担当者の疑問に、条項の例文と整備の手順をまとめてお答えします。厚生労働省が公表したカスタマーハラスメント対策企業マニュアル(2022年)でも就業規則への明文化は推奨されており、早期に着手する会社が増えています。

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カスハラを就業規則に書く必要性

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や取引先からの著しく不当な要求・言動によって、従業員の就業環境が害される状態を指します。暴言・長時間の拘束・土下座の強要・SNSでの誹謗中傷などが典型例です。パワハラやセクハラと異なり、行為者が社外にいるため、「会社が積極的に止めにくい」と感じる経営者や総務担当者も少なくありません。

就業規則にカスハラ対策条項を置く意義は2点あります。第1に、会社が従業員の安全配慮義務(労働契約法第5条)を果たしていることを内外に示す根拠になります。第2に、悪質な顧客に対して出入禁止・取引停止といった組織的な対処を行う際、「会社の方針として規定に基づいて対応している」と明示できるため、現場担当者が一人で抱え込まずに済みます。規定がなければ、担当者が「自分が我慢するしかない」と誤認するリスクが高まります。

東京都は2023年にカスタマーハラスメント防止条例を施行しており、事業者に対応方針の策定と周知を求める流れが全国に広がっています。就業規則への明記は、こうした行政の要請に応える最初の一歩でもあります。

就業規則に盛り込む5つの条項

カスハラ対策規定を整備する際、少なくとも次の5つの条項を設けることが実務上の目安です。①定義条項、②禁止行為の例示、③会社の対応方針(組織的対応の明示)、④相談・報告体制、⑤二次被害防止と情報共有、の5点です。

①定義条項では、カスハラをどの範囲まで指すかを文字で確定します。例:「顧客等からの要求・言動のうち、その要求内容の妥当性に照らし、態様または要求の程度が社会通念上相当な範囲を超え、従業員の就業環境を害するものをカスタマーハラスメントとする」といった形式が参考になります。過度に狭い定義は抜け穴になり、過度に広い定義は顧客対応そのものを萎縮させるため、「社会通念上相当な範囲を超える」という文言でバランスを取るのが一般的です。

②禁止行為の例示では、暴言・脅迫・長時間の拘束・過剰な謝罪要求・SNS等による公表の脅し・私的連絡先への直接連絡などを列挙します。ただし「これらに限らない」と結ぶことで、想定外の言動も対象に含めることができます。③会社の対応方針は「会社はカスハラを受けた従業員を組織的に支援し、必要に応じて取引を停止・制限する」などと書き、現場が判断を一人で抱えなくて済む旨を明文化します。④相談・報告体制では、相談先の役職名か部署名を具体的に記載し、口頭・書面・社内システム等、複数の報告経路を設けます。⑤二次被害防止として、相談内容を上長・担当者が口外しない義務と、相談者への不利益取扱いの禁止を明記します。

規定例(条文形式)

以下は就業規則に追加する条文の例です。自社の業種・規模・既存の規定構成に合わせて修正してご利用ください。なお、この例文は一般的な参考情報であり、作成代行や法的助言ではありません。最終的な条文の採否・文言は、社会保険労務士等の専門家にご確認のうえ決定してください。

【第○条(カスタマーハラスメントの定義)】本規則においてカスタマーハラスメントとは、顧客、取引先その他の社外の者から従業員に対して行われる言動であって、その要求または言動の内容・態様が社会通念上相当な範囲を超え、従業員の就業環境を害するものをいう。具体的には次の各号に掲げる行為を含むが、これらに限らない。(1)業務の範囲を逸脱した過大・不当な要求、(2)脅迫・暴言・威圧的な言動、(3)長時間の居座りまたは反復継続する連絡、(4)土下座や謝罪文書の強要、(5)SNS等を利用した誹謗中傷または公表の脅し。

【第○条(会社の対応方針)】会社はカスタマーハラスメントを受けた従業員を孤立させず、組織として対応する。会社は必要と判断した場合、当該顧客等との取引制限・入構禁止措置・法的手続きを含む対応を取ることができる。従業員は上長または相談窓口(第○条)に速やかに報告しなければならない。【第○条(相談・報告体制)】従業員はカスタマーハラスメントを受けた場合または目撃した場合、○○担当または人事総務部門に口頭・書面・社内メール等の方法で報告することができる。会社は相談者の秘密を保持し、相談したことを理由として当該従業員に不利益な取扱いをしない。

整備の手順と注意点

規定を新設・改定する際の手順は次のとおりです。まず、現状の就業規則にカスハラ関連の記述があるか確認します。既存のハラスメント禁止規定(パワハラ・セクハラ等)と同一条文に追記するか、独立した条を設けるかを検討します。条文の数が多くなる場合は「ハラスメント対策規程」として別規程に切り出す方法もあります。

次に、常時10人以上の従業員を使用する事業場では就業規則の変更届・意見書を労働基準監督署に提出する義務があります(労働基準法第89条・第90条)。従業員代表の意見聴取を経て、届出と同時に従業員への周知(掲示・配布・社内イントラでの閲覧等)を行います。規定を設けた後は、相談窓口の担当者への研修、管理職向けのカスハラ対応マニュアルの整備も合わせて行うと実効性が上がります。

注意点として、規定は設けるだけでは機能しません。相談が来た際に会社がどのように動くか、組織的対応フローを別途文書化し、担当者が迷わない状態にしておくことが大切です。また、顧客に対して「当社ではカスハラ対策方針を定めています」と公表することで、悪質な言動の抑止にもつながります。店頭・ウェブサイト・契約書類への方針掲示を検討してください。

番頭でできること:日々の労務データと規定整備の連携

番頭は、入社・退職・勤怠・面談記録といった日々の労務データを会社ごとに記憶し、担当者の質問に対して自社の前提を踏まえた整理を返すことができる労務AIです。カスハラ対策の就業規則整備においても、次のような場面で活用できます。

たとえば「現在の就業規則に何条まであるか」「相談窓口の担当者として登録されている役職は誰か」「過去にカスハラ関連で相談を受けた記録があるか」といった情報を番頭に問い合わせることで、規定の新設に必要な前提情報をすぐに確認できます。また、接客業務の多い部署の残業推移や有休取得率、面談記録のキーワードを番頷に整理させることで、従業員の接客ストレスが蓄積しやすい部署・時期を把握し、就業規則改正の優先順位を経営判断に活かすことができます。

規定の文面そのものを番頭が自動生成して確定させるわけではありません。あくまで「自社のデータを踏まえた整理・確認」を補助する役割です。最終的な条文の採用・運用方針の決定は、社会保険労務士等の専門家との確認を経て経営者が判断します。番頭はその判断に必要な情報整理の手間を減らすための仕組みです。

番頭はこう答えます

サンプルの会社情報を覚えた状態での、回答のイメージです。数値や規程の内容は説明用の例です。 番頭の答えは一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。

よくある質問

カスハラの規定は就業規則本体に書くべきですか、それとも別規程でも構いませんか?

どちらでも法令上の問題はありません。従業員数が少なく就業規則がシンプルな会社では本体に追記する方法が管理しやすく、ハラスメント対応フローが複雑になる会社では「ハラスメント対策規程」として独立させる方法が見やすくなります。いずれの場合も、就業規則本体に「ハラスメント対策規程を別に定める」と根拠規定を置くと、労働基準監督署への届出の際に一体として扱われます。どちらの構成が自社に合うかは、現在の規定の章立てや運用実態を踏まえて検討してください。

カスハラ規定を設けた後、従業員にはどのように周知すればよいですか?

就業規則の変更は、労働基準法上、従業員への周知が義務付けられています(同法第106条)。周知方法として、①事業場の見やすい場所への常時掲示、②書面交付、③社内イントラ等による常時確認可能な状態での提示、のいずれかが求められます。カスハラ規定を新設した際は、改定内容のポイントを全従業員向けに説明する機会(朝礼・研修・メール通知など)を設けると、制度の認知と実際の相談行動につながりやすくなります。

このページの情報をそのまま就業規則の条文として使えますか?

本ページで示している条文例は、一般的な参考情報として掲載しています。個別の企業の業種・規模・既存の就業規則の構成・労働組合の有無などによって、適切な文言や条項の位置づけは異なります。掲載内容はいかなる意味においても法的助言や書類作成代行ではありません。就業規則の改定にあたっては、社会保険労務士や弁護士等の専門家にご相談のうえ、最終的な文言の採否と届出手続きをご判断ください。番頭は自社データの整理・確認を補助しますが、条文確定の責任を代替するものではありません。

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