顧客からの暴言・長時間拘束・過剰要求に、社員が一人で対応し続けている職場は珍しくありません。カスタマーハラスメントへの対応規定を整備することで、現場の判断軸が明確になり、毅然と動ける体制が整います。本ページでは規定の条項例・判断基準・Kabauを使った履歴管理まで、実装ベースでご説明します。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や取引先から社員に向けられる、社会通念上の許容範囲を超えたクレームや迷惑行為を指します。暴言・土下座の強要・長時間にわたる電話での拘束・SNSでの誹謗中傷・繰り返しの来店による業務妨害などが代表例です。
規定がない状態では、現場の社員が『どこまで謝ればいいか』『いつ上司に引き継ぐか』を毎回自己判断するしかありません。判断が人によってばらつき、対応が長引くほど社員のメンタルヘルスへの影響が蓄積します。厚生労働省が2022年に公表したカスタマーハラスメント対策企業マニュアルでも、方針の明文化と全社への周知を対策の出発点として位置づけています。
規定を整えることで得られるメリットは3点です。①現場が『会社として許容しない行為』を根拠に断れる、②対応の引き継ぎ・エスカレーションの基準が共有される、③対応記録が蓄積し、同一顧客への対応一貫性が保てる。この3点が揃うと、繰り返し来る悪質クレームの抑止力にもなります。
カスタマーハラスメント規定の骨格は、以下5つの柱で構成するのが実務的です。就業規則の別規程として「カスタマーハラスメント対応規程」を設けるか、ハラスメント防止規程の一章として追加する形が一般的です。
【第1条 目的】本規程は、顧客等からのカスタマーハラスメント行為から従業員を守り、適切な業務環境を維持することを目的とする。【第2条 定義】カスタマーハラスメントとは、顧客・取引先・その他第三者から従業員に対して行われる、①暴言・脅迫・侮辱的言動、②正当な理由のない繰り返し要求(同一内容の連絡が○回を超えるもの)、③過剰な謝罪要求・土下座の強要、④長時間の電話・来店による業務妨害(1回あたり○分を超え業務に支障をきたすもの)、⑤SNSや口コミサイトでの虚偽の事実に基づく誹謗中傷のいずれかに該当する行為をいう。
【第3条 会社の姿勢】会社はカスタマーハラスメントを業務上の正当なクレームと明確に区別し、該当する行為に対しては毅然と対応する。従業員は正当な対応の結果として顧客等との関係が終了した場合でも、会社はその従業員に不利益を与えない。【第4条 対応手順】①初期対応:1名が対応し、ハラスメントの定義に該当すると判断した場合は上長へ即時報告する。②上長対応:上長は状況を確認の上、対応の継続・打ち切り・弁護士等専門家への相談を判断する。③記録:対応内容(日時・手段・相手の言動・対応者の判断)を対応記録票に記録し、所定の管理場所に保存する。
実務でよく迷うのは次の3パターンです。それぞれ判断の軸を持つことで、現場の迷いを減らせます。
①「しつこいが要求内容は正当」なケース。同じ苦情を10回繰り返す顧客がいた場合、内容の正当性と対応回数を切り分けます。規定の第2条で「同一内容の連絡が○回を超えるもの」と回数を明記しておくと、内容の適否ではなく行為の態様として対応を打ち切る根拠になります。目安としては、文書で回答済みの事項を5回以上繰り返す場合を一つの判断ラインとする企業が多いです。
②「大声だが店内での言動」なケース。来店中の大声クレームは録音できない場面が多く、証拠が残りにくいです。規定に「対応従業員は終了後15分以内にメモを対応記録票に記載する」と明記し、記録を習慣化します。後日の判断材料はメモの積み上げが基本です。③「SNS投稿が迷惑行為か」なケース。事実に基づく批評は原則として対象外です。「虚偽の事実に基づく誹謗中傷」に限定することで、正当な批評とハラスメントを区別できます。投稿内容が虚偽か否かの判断は、弁護士等専門家への確認を挟む運用をお勧めします。
規定を整えても、対応記録が紙や個人のメモに散在したままでは一貫した対応が難しくなります。同一顧客への過去の対応を引き継ぎ者が把握できていないと、毎回ゼロから交渉するような状況になりがちです。
対応記録票に最低限含める項目は、日時・対応者氏名・顧客情報(氏名または顧客番号)・連絡手段(電話・来店・メール等)・クレーム内容の要約・相手の言動のうちハラスメント該当行為・対応内容・上長への報告有無・次回対応方針の9項目です。この記録を所定の共有フォルダまたはシステムに集約することで、管理者が俯瞰して『この顧客への対応は会社全体でどこまで進んでいるか』を確認できます。
Kabauを使っている場合は、会社ごとに登録した対応フロー・引き継ぎ先・過去の記録の整理を補助する形で活用できます。例えば『この顧客との対応履歴を確認したい』とKabauに相談すると、登録済みの記録をまとめて整理し直す補助が可能です。最終的な判断(対応を打ち切るか・法的措置を検討するか)は、管理者が専門家と相談の上で行う前提ですが、判断材料の整理にかかる時間を大幅に短縮できます。
カスタマーハラスメント規程を整備した後、就業規則との整合を確認します。就業規則本体に「従業員はカスタマーハラスメントに関する別規程を遵守する」と明記し、別規程を附則として添付する形が一般的です。また、懲戒規定に「会社のカスタマーハラスメント対応方針に反し、ハラスメント行為を行った顧客等に対して不当に謝罪または金品を提供した場合」を加える企業もあります(従業員の側に義務を課す条項)。
Kabauには自社の就業規則や別規程を登録しておくことができます。登録後は『第○条の内容を確認したい』『この状況は第2条の定義に当てはまるか整理してほしい』といった形で問い合わせると、登録済みの規程をもとに条項の該当箇所を整理してお答えします。社員研修の際に『規程の第2条をわかりやすく説明する文章を作りたい』と依頼すると、規程の文言を噛み砕いた説明文の下書き補助も可能です。
規程は一度作れば終わりではなく、法改正や社会情勢の変化に合わせて見直しが必要です。2024年には改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の指針でカスタマーハラスメントへの対処も努力義務として明示的に盛り込まれました。このような動きがあったタイミングで、Kabauに『最新の法令状況と現在の規程に追加が必要な観点を整理してほしい』と相談することで、見直しの出発点となる情報整理をスムーズに始められます。
サンプルの会社情報を覚えた状態での、回答のイメージです。数値や規程の内容は説明用の例です。 就業規則AIの答えは一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。
うちの会社のカスハラ規程を登録してあります。今日、同じ顧客から1日に4回電話があって、3回目から担当が変わっています。規程の第2条に照らして今の状況を整理してもらえますか。
登録いただいている規程の第2条を確認しました。定義に『同一内容の連絡が○回を超えるもの』と記載されていますね。本日の電話が計4回であれば、その基準との照合で判断できます。担当が3回目で交代しているとのことで、引き継ぎ時点での対応記録の有無と、各回の会話内容がハラスメント行為に該当するかを第2条①〜④に照らして確認するのが次のステップになります。該当すると判断される場合、第4条②に従い上長判断のフェーズに移ることができます。具体的な対応の打ち切り可否や法的措置については、専門家にご相談ください。
規程の第2条の『1回あたり○分』の空欄に入れる数字を決めたいです。業種の傾向やよく使われる基準を教えてもらえますか。
業種の実態として、小売・飲食では30分超を基準ラインとする例が多く見られます。コールセンターを持つ企業では20〜30分を設定しているケースもあります。重要なのは『業務に支障をきたす』という事実と組み合わせる点で、時間だけでなく『その対応のために他の業務が停止した』という記録を対応記録票に残しておくと、後の判断材料として機能します。御社の業種・対応チームの規模・過去のクレーム傾向を踏まえて数字を決めるとよいです。最終的な規程の内容は、専門家にご確認いただくことをお勧めします。
新しく入った社員にカスハラ規程を説明したいので、第2条の定義をわかりやすい言葉に直した説明文の下書きを作ってもらえますか。
登録いただいている第2条を元に、新入社員向けの説明文の下書きをご用意します。『お客様からのご意見やクレームは、サービス改善のための大切な声です。一方で、次のような行為は業務上のクレームとは区別して対応します。①大声での怒鳴りつけや脅し・侮辱的な言葉、②同じ内容の問い合わせを5回以上繰り返すこと、③土下座や一方的な謝罪文の強要、④電話や来店が30分を超え他の業務が停止する状態、⑤事実ではない内容をSNSに書き込むこと。これらに当たると感じたときは、一人で対応し続けず、すぐに上長に報告してください。』この文章は下書きです。実際の規程の文言と照らし合わせてご確認の上、ご利用ください。
2024年改正の労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の指針において、事業主がカスタマーハラスメントへの対処について方針を定め、相談体制を整備することが努力義務として示されています。現時点では罰則付きの強制義務ではありませんが、規定がない状態でカスハラ被害を受けた社員がメンタルヘルス不調になった場合、会社の安全配慮義務(労働契約法第5条)との関係が問われる可能性があります。早めに方針と規定を整えることをお勧めします。
既存のハラスメント防止規程に章として追加する形でも、独立した別規程として設ける形でも、どちらも実務上問題ありません。判断のポイントは運用のしやすさです。カスハラの定義・対応フロー・記録の方法まで盛り込む場合は、条項数が増えるため独立規程の方が読みやすくなります。既存規程に一部追記する場合は、定義と対応手順の2条だけでも明記しておくことが最低限の出発点になります。
本ページの内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的判断や書類作成の代行ではありません。規程の具体的な条文や就業規則への組み込み方については、専門家にご確認いただくことを前提としてご活用ください。Kabauは登録いただいた自社の規程や情報をもとに、条項の整理・説明文の下書き・対応記録のまとめ補助を行いますが、法的効力の判断や規程の完成版作成を保証するものではありません。最終的な内容の確認と意思決定は、担当者または専門家が行ってください。
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