労働条件通知書は、雇い入れのたびに必ず作成・交付が求められる書面です。このページでは、フルタイム・パートタイムそれぞれの記入例と各項目の判断ポイントを、実務で迷いやすい箇所を中心にご説明します。
労働条件通知書には厚生労働省の参考様式(様式第5号など)がありますが、実際に記入を始めると「絶対的記載事項」と「相対的記載事項」の区別や、○か×かを選ぶ選択肢の意味、パートタイム労働者への追加記載義務など、判断を要する箇所が次々と出てきます。参考様式はあくまでひな形であり、自社の就業規則の内容・賃金規程の構成・勤務体系に合わせて書き直す必要があるため、初めて作成する担当者ほど「どこを変えていいのか」「この表現で正しいのか」という迷いが生じやすい状況です。
もう一つの難しさは、雇用形態によって記載すべき項目が変わる点です。労働基準法が定める記載事項はすべての雇用形態に共通しますが、パートタイム・有期雇用労働法(いわゆるパート有期法)はさらに4項目の明示義務を上乗せしています。フルタイム正社員とパートタイム・有期雇用者を同じ様式で作ると、記載漏れが発生しやすくなります。
【フルタイム正社員の記入例(主要項目)】 ①労働契約の期間:「期間の定めなし」と記入します。試用期間を設ける場合は「試用期間:〇か月」を別途明記すると後のトラブルを防ぎやすくなります。 ②就業場所・業務内容:「〇〇本社(東京都〇〇区〇〇)/営業業務」のように勤務開始時点の場所と業務を具体的に書きます。将来的に変更の可能性があるときは「会社の指定する就業場所」と添える方法もありますが、変更の範囲を書面で明示するルールが2024年4月施行の改正で義務化されていますので、「変更の範囲:会社の定める事業所(国内全拠点)」のような形で記載してください。 ③始業・終業時刻:「始業9:00/終業18:00(休憩60分)」と明示します。フレックスタイム制を採用している場合は、コアタイム・フレキシブルタイムの時間帯を記載します。 ④賃金:基本給の金額を記入し、諸手当がある場合は名称と金額を列挙します。「その他手当は別途辞令による」という曖昧な書き方は労基法の趣旨に沿いません。 ⑤退職・解雇:退職申し出の期限(例:「退職希望日の30日前までに申し出ること」)と、解雇事由の概要(就業規則第〇条参照)を記載します。就業規則を参照する場合でも、通知書に「就業規則第〇条による」と条番号を明記するとより丁寧です。
【パートタイム・有期雇用労働者への追加記載事項】 パート有期法第6条は、以下4項目の文書明示を義務づけています。正社員と共通の様式を使う場合も、これらを追記してください。 ①昇給の有無(例:「有:査定により毎年4月に昇給の場合あり」「無:昇給なし」) ②賞与の有無(例:「有:年2回、業績により支給」「無:賞与なし」) ③退職手当の有無(例:「無」) ④相談窓口(例:「総務部〇〇(内線〇〇)」) これらは「有・無」のどちらかを必ず明記します。「場合によっては有」という曖昧な表現は避け、実態に即した選択肢を選んでください。
【有期雇用契約の更新に関する明示(2024年4月改正対応)】 有期労働契約を締結・更新するときは、更新の上限回数や通算期間の上限を書面で明示する義務が加わりました。例えば「更新回数の上限:なし(ただし都度会社が判断)」または「通算3年を上限とする」のように記入します。更新しない場合はその旨を明記してください。この項目を漏らすと、2024年4月以降の契約分は明示義務違反となり得ますので注意が必要です。
以下の項目を通知書の記入前に社内で確認してください。漏れがあると記入内容が実態と食い違い、後から修正が必要になります。 □ 就業規則の最新版が手元にあるか(労基署への届け出済みのもの) □ 今回の雇用形態(正社員・パート・有期)を確定しているか □ 試用期間を設ける場合、期間・条件が就業規則に明記されているか □ 賃金規程に基づき基本給・手当の金額が確定しているか □ フレックス・変形労働時間制を採用する場合、労使協定が締結済みか □ 2024年4月改正対応の「就業場所・業務内容の変更の範囲」が記載欄に設けられているか □ 有期契約の場合、更新の上限(回数・年数)を社内で方針決定しているか □ パートタイム・有期雇用なら昇給・賞与・退職手当の有無が確定しているか □ 相談窓口(担当者名・連絡先)を通知書に記載できる状態になっているか □ 電子交付を使う場合、労働者本人が同意しているか(メール・PDF等の同意記録を残す) このリストで「未確定」が残っている状態で記入を始めると、後から差し替えが発生します。雇い入れ前に方針を固めておくことが、ミスを減らす最短ルートです。
Kabauは、自社の就業規則・賃金規程・雇用形態のパターンを登録しておくと、「今回の採用条件に合った労働条件通知書の記載項目と書き方」を確認する際の整理を補助します。たとえば「パートタイムで週3日・時給制・有期6か月・更新あり」という条件を入力すると、対応する法定記載事項と追加明示事項をリストアップし、記入例のたたき台をまとめる形で使えます。
担当者が変わっても、会社ごとの前提(就業規則の条番号・賃金規程の構造など)をKabauが記憶しているため、毎回ゼロから確認する手間が省けます。作成後の確認作業でも「この項目は記載されているか」を会話形式で確認できるため、チェック漏れを防ぎやすくなります。最終的な内容の適否は、必要に応じて専門家に確認する運用を組み合わせることが安心です。
電子交付への切り替えを検討している場合も、Kabauで労働者別の同意取得状況や交付日を管理することで、「誰に・いつ・どの版を渡したか」の記録を一元化できます。紙管理と電子管理が混在している会社でも、Kabauを起点に整理を進めやすい設計になっています。
労働条件通知書は、労働契約を結ぶ前か遅くとも締結と同時に交付することが求められます。「入社当日に渡せばよい」という認識は厳密には誤りで、採用内定の段階で条件を提示し、労働者が合意したうえで契約を結ぶ流れが法の趣旨に合っています。内定通知と一緒に送付するか、入社手続きの前に電子メール等で事前確認してもらう運用が、トラブル防止の観点から望ましい形です。
保管期間については、労働基準法施行規則第56条に「労働者名簿・賃金台帳と同様に保管する」とある一方、契約書類の保管期間は一般的に退職後5年間(経過措置として当面3年)が目安とされています。電子交付の場合も同様の期間、アクセスできる状態で保管する必要があります。紙で交付した場合は控えを会社が保管し、内容変更があった際は変更後の書面も合わせて保管してください。
サンプルの会社情報を覚えた状態での、回答のイメージです。数値や規程の内容は説明用の例です。 就業規則AIの答えは一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。
うちはパートを初めて雇います。正社員と同じ様式を使っていいですか?追加で書くことはありますか?
正社員向けの様式をベースにすることは可能ですが、パートタイム・有期雇用労働者には追加で明示が必要な項目があります。御社の就業規則と賃金規程の内容をもとに確認すると、①昇給の有無、②賞与の有無、③退職手当の有無、④相談窓口の4項目を書面に加える必要があります。また、有期契約であれば更新の上限や変更の範囲の明示も2024年4月以降は必須です。御社の規程で昇給・賞与がどう定まっているかを確認したうえで、「有・無」いずれかをはっきり記載する形でたたき台を整理しましょう。最終的な記載内容の確認は、専門家にご相談いただくことをお勧めします。
就業場所の変更の範囲はどう書けばいいですか?転勤を想定していますが…
御社が転勤を想定している場合、「変更の範囲:会社が指定する事業所(国内全拠点)」のような記載が一つの例です。ただし、実際に想定している転勤の範囲(例:近隣拠点のみか、全国かなど)と記載内容が食い違うと後のトラブルにつながるため、御社の雇用方針に合わせて範囲を確定させることが先決です。就業規則に転勤条項がある場合はその条番号も合わせて記載しておくと、通知書と規則の整合性が取りやすくなります。具体的な文言の適否は専門家への相談もご活用ください。
書面交付が原則ですが、労働者本人が同意した場合はメールやPDFなどの電子交付も認められています。電子交付を使う場合は、労働者が内容を出力・保存できる形式であること、同意を得たことの記録を会社側が保管することがポイントです。口頭だけで済ませる方法は、雇用形態を問わず認められていません。
賃金や労働時間など主要な労働条件を変更する場合は、変更後の内容を改めて書面で明示し、労働者の合意を得る手続きが必要です。「前の通知書に書いてあったから変更不要」とはなりません。変更の合意書または変更後の労働条件通知書を作成し、双方が保管する運用をお勧めします。
このページは一般的な情報提供を目的としており、個別企業の事情に応じた書類作成の代行や、法的な判断の提供を行うものではありません。記載内容の適否や自社の規程との整合性については、最終的には専門家にご確認いただくことをお勧めします。Kabauはあくまで整理・確認の補助として活用していただき、判断の拠りどころは専門家との相談と組み合わせる運用が安心です。
この記事が扱っている論点を、そのまま点検項目にしました。すでに確認できているものに チェックを入れてください。登録もダウンロードも不要です。
まだ確認していない項目: 3 件 / 全 3 件
まだ確認していない項目と、それぞれについてこの記事が書いている内容を、 この画面にそのまま1枚で表示します。印刷とPDF保存ができます。(先にチェックを入れると、確認済みの項目は1枚から外れます)
ほかの使い方も見る