顧客からの暴言・過度なクレームへの対応に悩む企業が増えています。就業規則にカスタマーハラスメント(カスハラ)対策を明記することで、従業員が安心して対応できる根拠を作り、会社としての毅然とした姿勢を社内外に示すことができます。
厚生労働省が2023年に公表した調査では、職場のハラスメントのうちカスタマーハラスメントを経験したことがあると回答した従業員の割合は15.0%にのぼります。特に接客・小売・医療・飲食などの業種では体感的にさらに高い数字になりやすく、放置すれば従業員の精神的負担・離職・休職につながります。
使用者(会社)には、労働契約法5条に基づく安全配慮義務があります。これは身体的な危険だけでなく、精神的な健康を害するリスクへの対応も含まれると一般的に解釈されています。つまり、顧客からの著しい迷惑行為に従業員をさらしたまま放置することは、会社の義務を果たしていない状態になりえます。
就業規則にカスハラ対策を明文化することで、『どの行為がカスハラに該当するか』『会社はどう対応するか』『従業員はどう行動してよいか』の3点が共有されます。口頭の方針だけでは、現場の従業員が判断に迷い、一人で抱え込む事態を招きます。条文として明記することが、現場の安心の土台になります。
カスハラ対策の条文は、既存のハラスメント禁止規定(セクハラ・パワハラ)と並べて設けるか、新たに独立した章として設けるかのいずれかで対応する会社が多くなっています。条文に盛り込む内容は主に次の4点です。①カスハラの定義(顧客・取引先等からの著しい迷惑行為を指す旨)、②会社の方針(従業員を守るために毅然と対応する旨)、③対応手順(現場での初期対応→上長への報告→会社としての対応)、④従業員の義務と保護(報告義務・不利益取扱いの禁止)。
条文の記載例として参考になるのは次のような表現です。『第〇条(カスタマーハラスメントへの対応)会社は、顧客・取引先その他第三者から従業員に対する著しい迷惑行為(暴言・長時間の拘束・合理的な範囲を超える要求・誹謗中傷等)をカスタマーハラスメントとして定め、これを防止し、発生時には従業員を保護するための措置を講じる。従業員はカスハラを受けた場合、直ちに上長に報告しなければならない。会社は報告を受けた従業員に対し不利益な取扱いをしない。』この条文はあくまで記載の方向性を示すひな形であり、自社の業種・規模・既存の規定構成に合わせて修正する必要があります。
条文の追加に伴い就業規則を改定する場合、常時10人以上の従業員を雇用する事業場では労働基準監督署への届出が必要です(労働基準法89条)。また、就業規則の改定が従業員に不利益な変更でない場合も、従業員代表への意見聴取と意見書の添付が求められます。改定手続きを省略すると、せっかく条文を追加しても法的な有効性に問題が生じることがあります。
以下の項目を自社の現状と照らし合わせて確認してください。 □ 現行の就業規則にカスハラまたは第三者からのハラスメントに関する条文が存在するか □ ハラスメントの定義条項に『顧客・取引先等の第三者』が含まれているか □ カスハラ発生時の報告先・エスカレーション手順が明文化されているか □ 従業員が対応を打ち切る・電話を終了するといった自衛行動を会社が認めている旨が規定されているか □ 報告した従業員への不利益取扱いを禁止する規定があるか □ 就業規則の改定後、従業員への周知手続き(掲示・配布・社内システムへの登録)が取られているか □ 就業規則の改定届・従業員代表の意見書が最新版に基づいて整備されているか □ 管理職向けにカスハラ初動対応の社内マニュアルまたは研修が実施されているか
上記のすべてが『はい』であれば、基本的な整備は整っている状態といえます。1つでも『いいえ』がある場合は、その箇所が対応漏れのリスクポイントになります。特に『報告した従業員への不利益取扱いの禁止』と『従業員が対応を打ち切れる旨の明記』は、現場の安心感に直結するため優先して確認することをお勧めします。
就業規則にカスハラ対策を盛り込んでも、運用が伴わなければ形骸化します。特に重要なのは、カスハラが発生した際の記録の残し方です。いつ・誰が・どの顧客から・どのような言動を受けたかを文書化しておくことで、対応の引き継ぎがスムーズになり、悪質な場合には法的対応の根拠資料にもなります。
記録は出来事のすぐ後に行うことが正確性を保つうえで重要です。メモ・録音・社内システムへの入力など方法は問いませんが、後から参照できる形で保存することが原則です。また、蓄積された記録を定期的に集計・分析することで、どの窓口・時間帯・業務でカスハラが多いかを把握でき、人員配置や対応方針の見直しにつなげることができます。
就業規則に盛り込んだ方針が実際の現場行動と一致しているかを確認するために、年に1回程度は条文の内容と実際の対応手順を照らし合わせる機会を設けることをお勧めします。法改正や行政のガイドライン更新(厚生労働省は2024年にカスハラ対策の指針を示しています)があった場合は、条文を適時見直す必要があります。
Kabauは、会社の就業規則・雇用契約書・社内ルールをあらかじめ登録しておくことで、改定時の確認や条文の整合性チェックをその都度0から調べ直さずに行えるようにする労務AIです。カスハラ対策の条文を追加する場面では、既存の規定構成(定義条項の位置・番号体系・他のハラスメント規定との並び)をKabauが把握しているため、追加箇所と表現の方向性を素早く整理する補助が可能です。
また、カスハラが発生したあとの記録・報告フローの確認も、Kabauに会社の報告体制を登録しておけば、現場担当者が『このケースは誰に報告すればいいか』『どのフォームを使うべきか』を問い合わせるたびに一から確認する手間を省けます。日々の運用の中で積み重なる小さな確認作業を効率化することが、Kabauの実用的な役割のひとつです。
なお、KabauはAIによる情報整理・補助ツールであり、就業規則の作成代行や個別の法的判断を提供するものではありません。条文の最終確認・届出手続き・従業員代表との合意形成については、専門家に相談することをお勧めします。
サンプルの会社情報を覚えた状態での、回答のイメージです。数値や規程の内容は説明用の例です。 就業規則AIの答えは一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。
うちの就業規則にはセクハラとパワハラの規定はあるんですが、カスハラについての記述が見当たりません。どこに追加すればいいですか?
登録いただいている御社の就業規則を確認したところ、第〇章にハラスメント防止規定が設けられており、セクハラ・パワハラがそれぞれ条文化されています。カスハラの追加は、この章の末尾(パワハラ規定の次条)に新たな条文として設けるのが構成上の整合が取りやすいと考えられます。追加する条文に含めるべき項目として、定義・会社の方針・報告手順・不利益取扱いの禁止の4点が一般的に盛り込まれます。文言の最終確認と届出手続きは専門家と進めることをお勧めします。
カスハラが起きたときに従業員が電話を切ってもいいと明記したいのですが、どんな表現にすればよいですか?
御社の業種(登録情報:小売業)では、電話対応中に暴言を受けた場面が想定されますね。条文の表現としては『従業員は、顧客等から著しい暴言・威圧的言動を受けた場合、上長の判断または本人の判断により通話・面談を中断することができる』といった方向性が参考になります。ただし、この表現が御社の既存の接客規程・クレーム対応マニュアルと矛盾しないかを確認する必要があります。登録いただいているマニュアルの記載と整合を取る形で修正することをお勧めします。文言の確定は専門家にご確認ください。
就業規則を改定したあと、従業員に周知するにはどうすればいいですか?
就業規則の周知方法として労働基準法が認めているのは、①事業場の見やすい場所への常時掲示、②書面での交付、③社内システム(イントラネット等)への電子掲載の3つです。御社の場合、登録情報によると社内イントラを運用されているため、改定版をイントラにアップロードしたうえで従業員に更新通知を送る方法が現実的です。紙の掲示を補助的に使う会社も多くあります。どの方法でも『従業員がいつでも確認できる状態』を作ることが要件を満たすうえでの核心です。
現時点(2025年時点)では、カスハラ対策の就業規則記載を直接義務付ける法律はありません。ただし、使用者には労働契約法5条に基づく安全配慮義務があり、カスハラを放置することで従業員がメンタル不調・休職・退職に至った場合、会社の責任が問われる可能性があります。また、2024年に厚生労働省が公表したカスハラ対策の指針では、会社としての方針を明確にすることが推奨されています。義務かどうかよりも、従業員を守るための体制を整備しているかが問われる時代になっています。
従業員数が少なくても、顧客と直接接する業種であれば対応の必要性は変わりません。むしろ小規模な会社ほど、一人の従業員がカスハラによって体調を崩したときの業務への影響が大きくなります。就業規則の作成義務は常時10人以上の従業員を雇用する事業場に課されていますが、10人未満の事業場でも就業規則を整備し、カスハラへの対応方針を明文化しておくことは、従業員との信頼関係を維持するうえで有効です。
Kabauは条文の方向性や既存の就業規則との整合確認を補助するツールですが、就業規則の作成代行・労働基準監督署への届出代行・個別の法的助言は提供していません。就業規則の改定に関する最終的な内容確認・届出・従業員代表との合意形成については、専門家に相談することをお勧めします。Kabauの役割は、日々の確認作業・記録・運用の効率化を支援することにあります。
この記事が扱っている論点を、そのまま点検項目にしました。すでに確認できているものに チェックを入れてください。登録もダウンロードも不要です。
まだ確認していない項目: 3 件 / 全 3 件
まだ確認していない項目と、それぞれについてこの記事が書いている内容を、 この画面にそのまま1枚で表示します。印刷とPDF保存ができます。(先にチェックを入れると、確認済みの項目は1枚から外れます)
ほかの使い方も見る